連携講座「池袋学」|女性が暮らしやすいまちづくり—消滅可能性都市から持続発展都市へー
桜木 由美子(21世紀社会デザイン研究科博士課程前期課程1年次)
2015/11/20
トピックス
OVERVIEW
東京芸術劇場×立教大学 連携講座「池袋学」<秋季>
日時 | 2015年10月24日(土)14:00~16:00 |
会場 | 池袋キャンパス 太刀川記念館3階ホール |
講演者 | 萩原 なつ子(立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科教授) |
レポート
2015年度第6回目を迎えた池袋学。今回の講座には、本学大学院21世紀社会デザイン研究科の萩原なつ子教授が登壇し、「女性の視点」と「新しい公共」をキーワードに「女性が暮らしやすいまちづくり-消滅可能性都市から持続発展都市へ-」について講演されました。
萩原教授は、講演の冒頭、「女性の視点」に絡めて、男女共同参画社会基本法が1999年に施行されたものの、いまだ固定的な従来型の性別役割分担が根強く、これが解消されていないこと、男性の意識改革が進んでいないこと、政策決定過程への女性の参画が進んでいないことを省み、現在は、「男はこうあるべき、女はこうあるべき」という考え方を積極的に変える必要性や、「202030」、つまり、「2020年までに各分野の指導的地位に女性の占める割合を少なくとも30%にする」という具体的な数値目標含む積極的是正策を紹介されました。グラフが示す社会の各分野における女性の割合はどの分野でも非常に低く、物事を決定する場に女性がいない現状と、何かを決める場面では「そこにいる人の視点」に陥りがちであるという説明に、私自身も日常で感じる女性の生きにくさをあらためて考えました。加えて、是正策を有効に実現するためには、ワーク?ライフバランス、長時間労働の見直し、子育て支援策等と上手く連携を図りつつ、経過や達成具合のモニタリングを継続的に実施する必要性を強く感じました。
萩原教授は、講演の冒頭、「女性の視点」に絡めて、男女共同参画社会基本法が1999年に施行されたものの、いまだ固定的な従来型の性別役割分担が根強く、これが解消されていないこと、男性の意識改革が進んでいないこと、政策決定過程への女性の参画が進んでいないことを省み、現在は、「男はこうあるべき、女はこうあるべき」という考え方を積極的に変える必要性や、「202030」、つまり、「2020年までに各分野の指導的地位に女性の占める割合を少なくとも30%にする」という具体的な数値目標含む積極的是正策を紹介されました。グラフが示す社会の各分野における女性の割合はどの分野でも非常に低く、物事を決定する場に女性がいない現状と、何かを決める場面では「そこにいる人の視点」に陥りがちであるという説明に、私自身も日常で感じる女性の生きにくさをあらためて考えました。加えて、是正策を有効に実現するためには、ワーク?ライフバランス、長時間労働の見直し、子育て支援策等と上手く連携を図りつつ、経過や達成具合のモニタリングを継続的に実施する必要性を強く感じました。
続けて、もうひとつのキーワードになる「新しい公共」とは、「公助=行政の取り組み」と「自助=個人がすること」の両方を基盤に、「共助=市民の参加?参画」が加わった社会のことをいいます。この10年では共助の果たす機能が特に注目されており、特に地域の問題においてはこれが顕著になっていることが説明されました。従来、地域を支えるのは行政でしたが、これからは市民による協働と男女共同参画に支えられた「新しい公共」こそ、「持続可能な社会づくり」の重要なファクターになりうるという考え方です。確かにその通りだと強く納得する反面、先にも確認された男女共同参画社会の状況にはまだまだその進展の加速化が言及される現状があることを考え合わせると、「新しい公共」における市民の協働と男女共同参画の実際のギャップについて疑問を感じる場面でもありました。しかしながら、次に紹介された萩原教授の具体的な取り組みに、この疑問がやはりこの考えを支持すべきだという確信に変わる気づきがありました。
昨年春、日本創成会議が2010年からの30年間に20~30歳代の女性の人口が50%以上減少することを指標に、少子化と人口減少が危ぶまれる「消滅可能性都市」として全国896の自治体を発表、その中に、池袋が属す豊島区が東京23区内で唯一含まれ、各所で大きな衝撃が走ったことは記憶に新しいと思います。指摘を受けた豊島区は、危機意識から、区長を本部長に「消滅可能性都市緊急対策本部」を直ちに設置し、要因分析と今後の対策についての検討を開始することに。呼びかけを受けた萩原教授は、女性が暮らしやすい街は誰にとっても暮らしやすいと説き、「私たちがとしまを変える!!」のスローガンの下、20~30歳代の女性を中心とした「としまF1会議」(以下、F1会議)の発足を区に提案、座長として地域で暮らす女性たちと共に半年間政策形成に向けたチャレンジを行うことになりました。F1会議は、行政に一方的に示された目標ではなく、行政と地域の住民が実際の対話を通じ、より多くの人が納得できる目標を設定し行政側に提案します。提案を受けた行政側に、単に「聞き置く」と処理されるのではなく、荻原教授自身の行政職としての経験を通じた知見に基づき、提案する時期を行政の事情に合わせて巧妙に設定することで、最終的に提案が次期の施策に反映され、事業化されることを目指しているそうです。F1会議の活動は創造的政策形成型の取り組みとして行政に大きなインパクトとさまざまな変革を与え、参画したメンバーにも大きな自信や活力をもたらしたという結果は、まさに理想的な「新しい公共」の実践のモデルといえるでしょう。
地域の住民一人一人が自身のできることをしっかり実践し、「私」を「私たち」へと緩やかにつないでいくことがまちに魅力や活力を生み出していく。
「としまF1会議」のキックオフイベントで聞いた豊島区のイメージの第2位は「池袋」。本講座で学ぶ「池袋」が、今回の講演で聴いた豊島区のチャレンジを背景に、街の魅力と活力を増し、持続発展都市へと変容していくこれからに大いに期待したいです。
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。
地域の住民一人一人が自身のできることをしっかり実践し、「私」を「私たち」へと緩やかにつないでいくことがまちに魅力や活力を生み出していく。
「としまF1会議」のキックオフイベントで聞いた豊島区のイメージの第2位は「池袋」。本講座で学ぶ「池袋」が、今回の講演で聴いた豊島区のチャレンジを背景に、街の魅力と活力を増し、持続発展都市へと変容していくこれからに大いに期待したいです。
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